あるMLで、「風の人・土の人」というタイトルの文を読んだことがある。外から刺激を持ち込むのが「風の人」、それを実践するのが「土の人」という解釈だった。僕は「水の人・木の人」があるんじゃないかと思う。「水の人」は、高い所から低い所へ流れ、行く手を阻むものがあれば、簡単にルートを変える。でも、一旦海へ出ると、再び姿を変えて山に戻ってくる。「木の人」は、根を張り、黙ってその場に居続ける。誰も見ていなくても、静かにしかし、着実に根を大地に深く張り、梢を太陽に向ける。僕は「木の人」になりたい。しっかりと、大地に根を張り、母なる地球の養分をもらって、枝葉を拡げ、堂々と父なる宇宙(そら)の恵みを受け止め、それを自分の力で内部に蓄え、静かに存在し続けたい。
僕の師匠は、大きな木のような人だった。「木は偉いぞん」が口癖。一旦根を下ろしたら、もう動くことをしない。運命を受け止め、その境遇で生きる。生き抜く。僕はそんな師匠の生き様を見てきた。死んでなお、僕に生き様を見せてくれている師匠だ。僕も「大きな木」のような人になりたい。
誰も見ていない、誰も褒めてくれない状況でも、明るい日差しのときも、真っ暗闇でも、堂々と、真っ直ぐに上を向き、見えないところに根を伸ばし、いくら揺さぶりをかけられても倒れない。太陽と月と土と水と空気、自分を取り巻く全てのことに深く関わりつつ、己を貫きつつ、潔く自己完結しているような、悠久の記憶をその細胞に刻みながら、それでも今を精一杯生き抜く。そんな「木の人」になりたい。