自分のしている事を、目を背けずに見てみた。
自分自身に恥じる事は無いか?もう一度自問自答してみた。
もちろん、嘘はない。自分のしている事には自信もあるし、矛盾も迷いも無い。未来は明るいと確信している。
だけど、まだまだ甘い。甘ったれている。
「稼ぎ」と「仕事」。これがキッチリ両立してこそ、本当の大人だ。それは充分にわかっているつもりだし、それがささやかな目標だ。
しかし今の僕は、そのどちらも中途半端だ。志半ばの半端者だ。
生業としてこの道を選んだ以上、後戻りできないし、するつもりもない。
問題は、生臭い話だが、やはり収入だ。ある程度のお金が必要なのだ。正直、ここまで苦労するとは思っていなかった。もちろん、炭が爆発的に売れるとも思っていないし、この不景気の中、そんな簡単じゃない事はわかっていた。覚悟はできているので、現実を受け止める事は容易だ。実に酷い。もう、笑うしかないくらいだ。
確かに田舎で暮らせば、日々の暮らしにかかる経費は想像以上に少ない。だが事業を進めていく以上、これではいけない。少なくとも、山で雇用を生み出すくらいの事業にする必要があると思う。
そして、僕の役割はもっと大きいと思っている。
それは、「火の文化」である「炭」を残していくことだ。「炭やき」という仕事をきちんと継いで、それを誰かに託すこと。エコとか、CO2排出削減も大切だが、それよりも「炭」そのものを残したいのだ。
まだある。心の底から願うこと。それは、山を守り、水を守り、母なる地球そのものを守り、何代もあとの子孫に真っ当な形でこの星を残したいということだ。
貧乏でも、この思いとやる気が失せていないことが救いだ。
今は苦労のとき。僕よりも辛い人は大勢いる。稼ぎは少なくても、自分の好きな仕事を、自分の段取りで進められる僕は幸せ者だ。周りの人に助けられている。一人では何もできない。
特に、地元の人たちにはどれだけ世話になっているか、計り知れない。こんなヨソモノを追い出さずに置いてくれている。それだけでも感謝しなければ。
働く事が恩返しだ。もちろん、まずは自分のため。自分の周りの人の幸せのため。
そうは言っても、日々の暮らしは本当に苦しい。しかし、食欲はあるし、よく眠れる。根っからの楽天家なのだろう。朝になれば、その日の作業の段取りを考え、身体を動かす。やはり僕は恵まれているのだ。
あの角を曲がれば、神様が微笑んでいるかもしれない。そこに居なくても、次の角にはいるかもしれない。少なくとも、山の神は見ていてくれる。お天道様は見捨てたりしない。
そんな簡単なことじゃないけれど、もう少し、ここで頑張ってみようと思う。
