雪だ。けっこう積もった。
そして、今日の僕はすこぶる機嫌が悪い。
これから書くことは、人の悪口です。見たくない人はスルーして下さい。
いつものように、工場で仕事をしていた。木挽き仕事が一段落したので、おが粉を集めたり、挽いた材を整理したり、コアをまとめたり、掃除したり、窯は順調に冷めているので(窯のどこかに不具合があると、冷めずにどんどん灰になってしまう)、淡々とそれでもご機嫌に仕事をしていた。
そんな時、泥棒が来た。
盗まれたのは僕の時間。職人の時間を奪うということは、僕のお金を奪うのと同じこと。やって来たのは「時間泥棒」だった。
そのジジイは、断りも無く勝手に敷地に入って来て、図々しく僕の近くまでやってきた。「やっと会えましたね」というそのジジイ。
最初、地元の人かと思って「どちらの方ですか?約束してましたっけ?」と聞いたら、豊田街中に住んでて、森林ボランティアをしているトヨタのOBだと言っていた。
僕には、面識の無い人のところへいきなり来るという神経が理解できない。そのジジイは春に載せてもらった中日新聞を見て、その後で僕のホームページも見たと。それならば、事前に連絡ができるはずだ。
置いてあった僕のチェンソーの鞘を勝手に外して、刃を見たらしい。「さすがにいい刃だね。目立て教えてもらわなきゃ」と、笑顔で。
僕は「目立て教えますよ。一日3万円もらいますけど」と言った。そのジジイは「えっ?お金取るの?」だと。他にも、聞きもしないのに、自慢話(レベルの低い話だったけど)。その間、僕は何度も時計を見た。それは、そのジジイに自分が時間泥棒だと気付いて欲しかったからだ。その時点で僕はそのジジイの相手をするのが嫌になっていた。すると、そのジジイは僕の大切な製材機のレールに足を乗せたまま「人が話をしている時に時計を見るって、失礼じゃないかな?」と言った。僕はキレた。
「失礼なのはどっちですか?いきなりやってきて、勝手に入り込んで、職人の仕事時間を奪っておいて、そっちの方が何倍も無礼じゃないか?」と、言葉を選んで穏やかに言ってみた。もっと汚い言葉で罵る事もできたけど、妙に冷静にその哀れなジジイを観察してる自分がいた。
時々こういう事が起きる。実店舗で商売をしているならともかく、ここは危険な道具もあるし、ハイ積みしてある丸太は積んであるだけなので、崩れて下敷きになる恐れもある。
面識のある人ならともかく、興味本位で職人の仕事場へ入ってくるという行為は、不法侵入になる。
前の仕事場でも何回も何回もあって、そんな奴らは決して、炭を買ってくれたり、板を買ってくれたりしたことは無い。散々、質問されて、僕の貴重な時間を奪って、「いい話を聞かせてもらってありがとう」と帰ってゆく。今日のジジイも当然、手ぶらだったし、名乗ることもせず、一方的に自分の知識欲を満足させたいだけだった。
偏見かもしれないけど、大企業を定年まで勤め、定年後の自分探しをしているジジイたちに多い。その手は僕の大嫌いな森林ボランティアたちにたくさんいる。
金と時間はあるけど、礼儀やリスペクトを知らない。
僕はお客さんを大事にするけど、神様だとは思っていない。特に伐採など、自分ではできない事を依頼してくるのだから、立場は対等だ。たいていの場合、向こうが思っている金額よりも高い見積もりを出すことが多い。見積もり段階で値引きの交渉には応じるし、大儲けしようとは思ってないけど、決して安くすることがいいとは思っていない。
ところが、仕事が終わってから、何かと難癖をつけてきて、値切ろうとする奴らもいる。その場では何も言わないのに、後からグダグダ言う奴。
今日のジジイもそんな感じだ。きっと、あちこちに僕の悪口でも言ってるんだろう。
まあ、いくらでも言ってくれ。
何でもお金に換算するのは嫌いだけど、「時間泥棒」に奪われた時間とお金は戻らない。
若い活動家にもそんなタイプは時々いる。
せめて、事前に予定を確認してから来てほしい。
どんな事だって、メリットが無い事はしたくないんだ。メリットとは、お金の事だけじゃない。
毎日、熊手で小銭をかき集めるような暮らしをしている個人事業主です。ケチと言われようと、偏屈だと噂されようと、自分のケツを自分で拭かなきゃいけない。定年後の遊びに付き合っていられるほど、こっちには余裕は無いんだ。