工場も寒くて、火鉢に炭火を熾している。
休憩の時、手あぶりしながら、ウッドガスストーブで沸かしたお湯で淹れた、暖かいコーヒーを飲む。
20年やってきて、やっとこの炭が常にやけるようになったんだ。
中心まで同じトーンのオレンジ色。
この木(樫)が数十年間、毎日光合成を繰り返し、その結果幹に蓄えられた炭素を、炭化という熱分解で炭素の塊にしたものが「炭」だから、それを熾して燃やすという事は、炭素と酸素が酸化燃焼している様。
つまり、このオレンジ色は、太陽光エネルギーそのものということ。
父なる太陽の恵みを、蓄える事ができるのは植物だけ。
その恵みを炎という形で頂くことが、炭火を熾すということです。
修行中、師匠のやいた炭がこんな感じでオレンジ色に光ってた。炎も煙も出さず、ただただ、心地よい熱を放ち、静かに灰になってゆく炭。
それをようやく、意のままに作る事ができるようになりました。
自分で打った(構築した)窯で
自分で伐り出した樫の木で
僕はこの仕事(炭やき)しかできないけれど
この仕事は僕にしかできない。