僕は、名も無き山守、炭やきでいたい。
だから、ひたむきに山に入り、愚直な仕事を繰り返し、質素な生活を続けるんだ。世間は変化し続けるだろうけれど、僕の仕事は変わらない。変える必要もない。それが僕のやり方であり、僕の答だ。
僕がやろうとしていることは、僕が新しく開発した技術でもなく、閃いたアイディアでもない。インターネットで仕入れた上辺の知識でもない。
先輩から直接伝え聞き、自分の五感で確かめたこと。古来、日本人が培ってきた方法であり、技術であり、それはまさしく文化そのものなんだ。山の恵みを頂き、それを大切に使う。ただ、それだけ。それ以上でも、それ以下でもない。
僕は、誰とも闘わない。でも、誰にも負けない。
母なる大地が僕を生かしてくれる。父なる宇宙(そら)が見守ってくれている。
山の時間に逆らわないよう、丁寧に仕事をする。
僕が新月と葉枯らしに拘り、伐り出した木々が、僕が魂込めてやいた炭が、誰かの小さな喜びになって、それが僕の糧になれば、それだけでいいんだ。