木挽き(製材)について

目切れ無し製材とは?

目とは、年輪のことです。年輪とは、木が成長した証。木口(こぐち)を見ると、丸太の場合、レコード盤のようになっています。色が濃くて硬い部分とそうでない部分。
色が濃くて硬い部分を普通、年輪と言います。何故、こうなるか?
木は毎日成長しています。木が成長するとは、2方向の成長があり、縦方向(上下に伸びる)、横方向(木が太くなる)です。
余談ですが、木の縦方向の成長に関与する条件は、地位(その場所の水分、養分など生えている土地の要素)が重要な要素となります。木の横方向に関与する条件は、光合成の量(葉の多さ、太陽光の強さなど)が要素になります。
光合成は、太陽光の強さや日照時間などで変化します。つまり、光が強く葉に当たる時期(春~夏)は木の横方向の成長が早いのです。逆に、光が弱い時期(秋~冬)は横方向の成長が遅い。この光が弱い時期の成長が遅い部分が、年輪の色の濃い部分になります。それらは毎年繰り返されるので、色の濃い部分の数は、その木の年齢(樹齢)となります。
色の濃い部分を秋目(冬目という人もいる)、色の薄い部分を春目(夏目という人もいる)と呼びます。
僕たち木挽きは、この秋目に注目します。一本の木の形は円錐形。そして、その木の内部には、円錐形の秋目が樹齢の数だけ重なって入っています。その間を春目が埋めているということです。
秋目はゆっくりと成長しているので、密度が高く硬い部分です。
例えると、秋目が鉄筋、春目がコンクリートの関係に似ています。
秋目(硬い)、春目(柔らかい)、両方の特性があって、木はしなやかだけど、強い部材になります。
鉄筋コンクリートの構造物で、鉄筋を切ってしまったら強度が落ちます。
それと同じで、僕たちは木を挽くときに、秋目を切らないような製材を心がけます。これが「目切れ無し製材」です。「目切れ無製材」は、いわゆる芯持ちの構造材ではできません。板材、芯去りの材でしか、「目切れ無し製材」はできません。特に板材を採る(木から抜き出すので、採るという表現です)と、この目切れが無いことがとても重要になります。
芯持ち材は、木の芯(年輪の真ん中=最も古い部分)を材の中心に据えます。だから、材の元(木の根側)と裏(木の先端側=末とも言います)の芯を中心にした直方体を採った場合、木は円錐形なので、一番外側の目が切れることになります。しかし、芯からの目は繋がっているので、強いのです。大工は元と裏の寸法が同じでないと仕事しにくいので、直方体に挽く訳です。
一本の木を挽くことは、まるでマグロの解体に似ています。いろんな部位を、適材適所で採ってゆくのです。
僕の挽き方は、まずアテを取り(針葉樹は木の背(谷側)、広葉樹は木の腹(山側))、木の応力を落ち着かせて、アテ側に一面の面(ツラ)を作って、それを製材機の台車に置きます。
木は元を製材機の刃に向けて(逆にする人もいます)、木の皮面と刃が平行になるように調整。それで板を採れば、目切れ無しの板が採れます。
後は、木を回して、目のいいところで挽きつつ、芯持ち材を採るのなら、末口側で確認しながら順番に挽いてゆきます。
末口で芯持ち材の大きさになったら、末口の芯と、元の芯に糸を張り、その糸が刃と平行になるように挽く。
僕の製材で出る木っ端は、皮のついたかまぼこのような部分と、芯に近いところの三角形です。最後に芯持ちを挽いたとき、それまでは皮と平行に挽いてきたので、円錐形の分が木っ端になる訳です。これは、スピードと歩留まり重視の製材屋さんでは有り得ない挽き方となります。芯に近い良い部分を木っ端にしてしまうのですから。しかし、目切れ無し製材では必ず出ます。
スケールとスピードを重視した製材仕事では、僕のやり方は採用されません。
しかし、それで良いのです。
木は生き物です。僕は相手が生き物であるということを考えながら仕事をしたい。基本的に、自分で山に入って、自分で伐って、自分で搬出した木を、自分で運んで、自分で挽き、自分で配達するというスタイルです。

それを生かした木挽き(こびき)を目指し、実践してゆきます。
何卒、応援よろしくお願い申し上げます。